前回バロック建築を紹介してくれたじゃん。今度はサン・ピエトロ大聖堂やヴェルサイユ宮殿のような建築様式のことを教えてくれよ。
バロック建築ですね。歪んだ真珠などと揶揄されますが、その時代の権力者の栄華が最も現れた建築様式だと思います。見分け方や特徴をお教えしますね。
バロック建築とその前後の建築仕様について
ロマネスク建築
- 語源:「ローマ的な、ローマ風な」
- 年代:1世紀初頭~13世紀初頭
- 特徴:重厚な石積、小さい窓、暗い堂内、安定
- 中心地:、フランス、スペイン北部、ドイツ、英国、イタリア
- 代表建築:ピサ大聖堂(イタリア)、サント=マドレーヌ大聖堂 (フランス)、アーヘン大聖堂(ドイツ)
ゴシック建築
- 語源:「ゴート人の、ゴート風の」
- 年代:12世紀初頭~16世紀初頭
- 特徴:高さ、天に伸びる、高い天井、ステンドグラス
- 中心地:フランス以北
- 代表建築:ケルン大聖堂(ドイツ)、ノートルダム大聖堂(フランス)
ルネッサンス建築
- 語源:古代ローマの建築を再生
- 年代:15世紀初旬~17世紀初頭
- 特徴:シンメトリー、水平線、シンプル
- 中心地:イタリア(フィレンツェ)
- 代表建築:サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂、サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂(イタリア)
★バロック建築★
- 語源:「歪んだ真珠」
- 年代:16世紀下旬~19世紀
- 特徴:反宗教改革、豪華、複雑化、多様性、曲線美
- 中心地:イタリア(ローマ)、中央ヨーロッパ
- 代表建築:ヴェルサイユ宮殿(フランス)、サン・ピエトロ大聖堂(バチカン)、シェーンブルン宮殿(オーストリア)
哲太郎のバロック建築の印象はとにかく豪華。ヴェルサイユ宮殿なんてこんなところで生活したら疲れないかなって思うほど豪華な内装ですもんね。
ルネッサンス建築とバロック建築の違い
バロック建築の特徴
- バロック建築は、16世紀終盤頃から盛んになった建築様式。建築そのものだけではなく、彫刻や絵画を含めた様々な芸術活動によって空間を構成し、複雑さや多様性を示すことを特徴とする。特に内部空間の複雑な構成は、他の建築様式とは際立った特色となっている。
- バロックの語源はポルトガル語のBarocco(歪んだ真珠)といわれ、元々はグロテスクなまでに装飾過剰で大仰な建築に対する蔑称であった。
- 19世紀の様式氾濫期になるとバロック様式が国家建築にふさわしい様式として復興したが、これについては歴史主義建築と言われ、西洋の過去の建築様式を復古的に用いて設計された建築のこと。
ゴシック建築もそれを蔑んだ蔑称だったけど、バロック建築も装飾過剰を蔑んだ蔑称だったんだなあ。
ルネッサンス建築とバロック建築の違い
ルネッサンス建築 | バロック 建築 | |
発祥 | フィレンツェ | ローマ |
時代 | 15世紀初旬~17世紀初頭 | 16世紀下旬~19世紀 |
語源 | 古代ローマ文化の再生 | 歪んだ真珠 |
デザイン | 静 的 直線的 平面的 理性的 | 動 的 曲線的 曲面的 感情的 |
装 飾 | シンプル 平 面 | 豪 華 彫 刻 |
キーワード | 平面性 自然 真理 | 立体性 光 錯覚 |
こうして比較してみるとルネッサンス建築とバロック建築は真逆なんですね。複雑なゴシック建築から均整の取れたルネッサンス建築に流行が移ったが、シンプル過ぎるルネッサンス建築は物足りずに少しづつ装飾を増やしていったらバロック建築になったってところでしょうか。笑
歴史:カトリックの広告塔としてのバロック建築
- 16世紀ごろ、ローマカトリック教会は、バチカンのサンピエトロ大聖堂の改修費用を調達するため都合よく「過去の罪が許される免罪符」を販売。それに対し反発運動が起こり、ルターを中心に宗教改革が行われました。次第にローマカトリック教会の力は衰退していきます。
- その後、ローマカトリック教会が再び力を盛り返すために「反宗教改革」が起こります。バロック建築は、この反宗教改革のために信者を取り戻す広告塔として発展して行きました。
- 訪れる信者にとって教会の内部を特別な空間とするため、どんどん豪華な装飾が施され、それがバロック建築の豪華な装飾になったと言われています。また巨大なパイプオルガンがあるのも特徴で、大音量で信者の心を鷲掴みにしていったと言われます。
- やがてその豪華な建築は時の権力者の栄華の象徴として、宮殿建築にも取り入れられて行きました。
バロック建築はローマカトリックが宗教改革で離れた信者や新しい信者を獲得するために、教会に特別な異空間を演出したんですね。
バロック建築のキーワード
- バロック様式を理解するためのキーワードは「立体性」「光」「錯覚」と言われています。バロック建築をこの3つのキーワードを基に見てみましょう。
立体性 (Stereopsis)
- バロック建築では壁や柱、天井にまで彫刻などの立体的な装飾を施し、日常と異なる異空間を演出。
光 (Light)
- ルネッサンス建築の白を基調とした内装から、バロック建築では色々な色の大理石を用い、またうまく光を取り込んでここでも非日常を演出しています。
錯覚 (Illusion)
- 壁や天井にまで絵を描くことで、壁の向こうに異なる世界がある印象を与え、実際よりも広い世界を選出します。他にも楕円や装飾で実際よりも高い天井に見せたり、色々な錯覚を利用しています。
こうしてみるとゴシック建築も解りやすかったですが、バロック建築も解りやすいですね。
各国の代表的なバロック建築
サン・ピエトロ大聖堂(ヴァチカン市国)
- バチカン市国南東端にあるカトリック教会の総本山。サン・ピエトロは「聖ペテロ」の意。もともと使徒ペトロの墓所を祀る聖堂です。
- キリスト教の教会建築としては世界最大級の大きさを誇る。床面積2万3,000m2。
- 住所 : Piazza San Pietro, 00120 Città del Vaticano, Vatican
バロック建築はここから始まったと言っても過言ではありません。バロック建築の着想は、一般にミケランジェロの設計したサン・ピエトロ大聖堂の荘厳性や崇高性の中に初めて現れたと考えられています。
ヴェルサイユ宮殿(フランス)
- パリの南西22キロメートルに位置するヴェルサイユ宮殿。バロック建築の代表作で、豪華な建物と広大な美しい庭園で有名。1979年世界遺産には登録されました。
- 我々を魅了するのはその美しさだけでなく、そこで繰り広げられた歴史にもあります。歴史を大きく変えたフランス革命の舞台でもあり、マリー・アントワネットという美しき悲劇の女王を産んだ場所でもあります。
- 住所: 85 Rue de la Paroisse, 78000 Versailles
この宮殿を創設した太陽王と呼ばれたルイ14世にとって、自らの権力を誇示するのにバロック建築は最も合致した建築技法だったんですね。またはヴェルサイユ宮殿がバロック建築を育てたんでしょうか?
シェーンブルン宮殿(オーストリア)
- ウィーンのメイン観光スポット、世界遺産の「シェーンブルン宮殿」。モーツアルトも、エリザベートも、マリーアントワネットもここの住人でした。
- 宮殿内はガイドツアーで見学します。約30分インペリアルツアーと、約60分のグランドツアーがあります。チケット売り場に行列を避ける為、出来るならオンラインで予約することをお勧めします。
- 住所:Schlosstrasse 47, Vienna 1130, Austria
シェーンブルン宮殿はオーストリアの後期バロック建築の到達点であると言えます。意匠である都市型宮殿の構成はボヘミアに広がり、プラハはその最も活動的な拠点となりました。
セントポール大聖堂(イギリス)
- 英国国教会として様々な国家的式典も執り行われます。1981年にはチャールズ皇太子とダイアナ元妃の結婚式が挙げられた事でも有名。
- 現在の建物は英国王室の建築家クリストファー・レンによる設計。ドームの直径は34mでバチカンのサン・ピエトロ大聖堂に次ぐ大きさ。内部の装飾も床、壁、柱まで荘厳な美しさを誇っています。
- 住所:St. Paul’s Cathedral, London,
建築家ジョン・ヴァンブラが18世紀初期に建てた大聖堂。巨大な規模の建築で、主屋と翼屋を備えたパラーディオ風の構成を持っており、バロック建築特有の重量感もあります。
サン・カルロ・アッレ・クアトロ・フォンターネ聖堂(イタリア)
- ローマにあるカトリックの聖堂で、建築家フランチェスコ・ボッロミーニの作品。聖カルロに捧げられたローマにある3つの教会の1つです。
- バロック建築の最高傑作の1つで、楕円、曲線、装飾とバロック建築の特徴を色濃く残し、これぞバロック建築と見る者を魅了する建物。
- 住所:Via del Quirinale, 23
バロック建築の特徴が判りやすく全部盛り込まれていると名高い教会です。建築家フランチェスコ・ボッロミーニはバロック建築の申し子ですね。
バロック建築 まとめ
- バロック建築は建築そのものだけではなく、彫刻や絵画を含めた様々な芸術活動によって空間を構成し、複雑さや多様性を示すことを特徴とする。特に内部空間の複雑な構成は、他の建築様式とは際立った特色となっている。
- 反宗教改革のために信者を増やすことを目的に始まったバロック建築。教会内部を「立体性」「光」「錯覚」で装飾し、特別な空間を演出して異世界や非日常を演出して信者の心を掴んだ。
- 19世紀の様式氾濫期になるとバロック様式が歴史主義建築と言われ、国家建築にふさわしい様式として復興した。
コメント